頭痛がしぶとい。
買い物をするためにスーパーへ行くが、薬を飲んでもなかなか効かない。起きてからすぐに飲めばよかったものを、着替えだの洗顔だのしているうちに、痛みがどうにもならないところまできてしまっていたからだ。
万能薬など無い。
痛みかその前兆を感じた時点で飲むべき薬であった。
偏頭痛は刺激に弱いので、父の車ではシートを倒して過ごす。そうしないと、いろんなライトや信号がまともに眼球を直撃して、気持ちが悪くなってしまう。こんなんで料理作れるんかなー、主婦ってホント大変なんだなー、なんて、家事手伝い(プー)の分際で偉そうなことを考えつつ、自宅に戻って郵便受けを覗いた。


手紙が1通――差出人は高校時代の親友。
親友だ、なんて、勝手にわたしが思っているだけだったかもしれない。
去年の今頃にメールをやり取りして以来、何の連絡もしなかった。
できなかった。
怖かったのだ。
どんどん大人になっていく彼女を眺めながら、何の進歩もしていないわたしが、ひどく子供に思えて、実際それはそうだったし、気のとても利く活発的な彼女にくらべて、わたしはというと流行も知らず引きこもったまま過ごして、誕生日おめでとうだとか、そんなことぐらいしか言えない。
何もしてあげられない。
このまま、どんどん距離があいていってしまうのか。
そして、今年に入って、わたしは自分からメールを出した。
気の利いたこと何ひとつできないけど…というような内容の。
メールの返事は来なかった。そのかわりに、手紙が届いた。


「仕事中なのに不覚にも涙が出た。
 もう、わたしのことなんて忘れられたかなと思ってた」


ああ。
あのまま卑屈な憶病者のままでいたら、わたしは彼女を失っちゃうところだった。
ちゃんと手は届く。言葉も届く。よかった。
もう、ぼんやりとしているせいで、失ってばかりいるのは、たくさんだ……


彼女の書いてくれた「大切な友達」という言葉が、
29歳のわたしの、いちばんのプレゼントだ。
この言葉そのものが、綺麗な素敵な贈り物。




わたしはというと、おでこに冷えピタを貼ったまま料理を作り、今、レターセットを選んでいる。冷えピタを貼ったまま料理をして返事を書く。いまだに気の利いた言葉や文句は思いつかないから、自分のありのまましか書けないけども。


少しずつおとなになるために。
わたしは今日、マナーブックを買った。
まったく自慢にもならないが、わたしはものすごく行儀が悪いし、言葉遣いも29の女性と思えないほど荒い。それがいつまでに『おとなの女性のもの』になれるかどうかは知らないが、続けていればちょっとぐらいのマナーや作法も身につくだろう。


…何か悪いものでも食べたのかと、友が数人ぐらい真っ青になりそうだ…