そうでもしていないと、自分が自分でなくなってしまいそうだったのだ。


カッターに血が付着している。切ったのだから、当たり前だ。よくわからないが脂肪とかも付着していて、綺麗に拭き取らねば切れ味が悪くなる。指先で刃をぬぐうと、固まっていた血液が、ぱらぱらと皮膚の上に落ちた。
何故、切るのか。
「わからないけれど、切るとほっとする」
と言ったのは友達で、その頃わたしはまだリスカをしていなかったが、壁に頭を打ちつけるという行為は続いていた。どうして安心するのだろう。どうしてなのか、それは切った人にもわからない。切ったときにしか、わからない。
ほんの少し切っただけで、ばくばくいってた心臓が静かになる。その後は普通と変わらない態度で、ヨガも読書も料理もできる。こんな自分は、どこか、おかしい>わたしの自傷行為は思春期から止まっていない

エバミールの残る頭でぼんやりとページをめくり、ぼんやりとヨガをする。そのうちに覚醒してきて、空を飛ぶだの悟るだのという芸当はできないが、意味もなく掃除してしまったり。
水分を補給して、高橋克彦を読む。
まどろんでいると、父帰宅。里芋の煮転がしを作っていたら「買い物へいかないか」…コンビニのはずが駅前のデパート。そう、我々はそんな父娘だったのだ。歩きながら話すが、記憶が曖昧。「おとうさんが帰ってきてから、わたし起きてたっけ」「うん、ずーっと起きて料理とかしとったよ」「…そうだったかな」
そしてデパートはトラもよう。
阪神勝ったからなー」
食べ物や飲み物以外の買い物はNG。喰えということか(ここ数日食べていない)
薬のせいなのだが。
左手首に向けられる、父親の視線が痛い。
父は娘がカッターで手首を切っていることを知っている。利き手でないほうの左に傷が増えたのは、単なる料理中の散漫さだけではないということも、能面のような表情からも(よく表に出る)、たぶん。


増える絆創膏。なくなっていく絆創膏。
「靴擦れが痛い」とこぼしながらも、乾燥させて治そうとしていた娘――お陰で何度も手当を受けた――が、ありったけの絆創膏を貼ろうとしているのは、いったい何の傷なのか。
最近の番組って、リスカを扱ってるのが増えてたりする。そういうのは父も観ている。娘がそこに居るとか思っているんだろうか?

何となくリストアップ、自傷行為歴程

10歳‥人の居ないところで髪の毛をむしる
11歳‥人の居ないところで壁に頭を打ちつける、自分の体を拳で殴る等
14歳‥ささくれむしり。血が出ても続ける
15歳‥唇の皮膚をはがす。かさぶたもはがす
19歳‥寝ない食べない、注射点滴マニア
21歳‥倒れるまで何かしないと気が済まない
2×歳‥自分の首を自分で絞めたりしている
28歳‥リストカット
それ以降→ここに書いたことは毎日のようにやっていたりする