食欲が、階段を1段飛ばしで降りたようになくなっていく。食べ物を口にはするが、途中で厭になって食べるのを止めてしまう。食べなくては体重も体力も落ちていくばかりなので、口に押し込むようにして食べるが、ウンザリする。
味がおかしいのだ。
うつが悪化したときに、砂を食べているような感じがすることがあるが、それはこの前兆だった。空腹を感じるのに、食欲はない。
ついに夏の花粉症となってしまったせいでもあるだろうが、それにしても、つわりのように食べ物の好みが変わっていく。いつもなら喜んで食べるはずのものさえ「食べたくない」「美味しそうに見えない」と言っては遠ざけて、お味噌汁に至っては「なんか泥水?」などと、どこかのアメリカ人のようなことさえ不謹慎に考えてしまう。
玉子を食べるようにはしているが、それにしても「焼いた玉子は食べない」「半熟じゃないと認めない」なんて、もはや妊婦を通り越して子供でしかない。

好物の麺類も、あまり食べたくない。
点滴生活にだけは、戻りたくない。その意地だけが、かろうじてわたしと食べ物をつなぎとめているような状態だ。
「豆腐と牛乳と、ヨーグルトとお茶」
だなんて、《アーシアン》のちはやのようなことを言う。口角炎も治らない。このまま紫外線を浴びたりすると、痕になったりしてよろしくないのだが、食べるものが偏ってきていて、揚げ物なんて絶対に食べないから、サプリか何かで足してやらなくてはならない。
水分を採って寝転がる。アレルギーの薬が馴染むまでの、辛抱だ。