ペットロスの寂しさが、猫の病気でよみがえる。動物を飼うのは、今の自分に向いていないかも…と、自分の耳はどうでもよくて、昨晩は獣医のために早く就寝する。何か間違えているような気がしなくもないが、食べ物ではないもの(段ボール)をかじっては吐いて、カリカリに見向きもしなくなってきた猫を「じゃあ午後にでも」連れていく気にはなれない。
愛猫を拾って以来お世話になっている獣医さんは、少し前に移転した。それまでガソリンスタンドだったところが動物医療センターになり、獣医さんが3人に増え、フロア数も増えた。…前の診察券しか持っていないが、たぶん、ないよりマシだろう。
体調が悪いせいか、寝ていることが多くなった愛猫も、このときばかりはギャーギャー暴れる。ホントに病気か? と一瞬半眼になってキャリーケースを手に立ち尽くしたが、そんなことをしている場合ではない。何がなんでもケースに入れなくては……ホントに病気か…?
しかし、抱いてみたら少し軽いように思う。なぜか下痢を朝からしている飼い主、赤いキャリーケースになんとか猫を入れ、雨の中を歩きたくないと思いながらも歩く。自分、下痢してるのになんで獣医に行くんだろう…とやや疑問に感じながら、雨の日、いつかこんなふうに歩いたことがあったような――思い出した。
あれはまだ、我が家に猫がいなくて、愛犬が心臓病だと判明したときだ。歩きたがるあの子を歩かせるわけにはいかず、ごめんね、ごめんねって言いながら動物病院まで急いだんだっけ。どうして散歩させてくれないのかって、不満そうにキャンキャン吠える愛犬に声をかけて、吠えても心臓に負担がかかる、歩かせても雨では駄目、と、ぐるぐる考えながら歩いたんだっけ。
センターは静かなものだった。初診からお世話になっていた先生ではなかったのと、愛猫にとっては「初めての建物」で、ケースをちょっと開けてやっても出てこない。獣医&看護師&飼い主の3人がかりで引っ張り出さないと診察ができないほどの力で、出てこようとはしない。動物病院の頃はカウンターを飛び越えて、リードで首を吊ってしまい、首吊りをやめさせるにはリードを離すしかなく、悲鳴をあげて「うちの猫がそっちに行きました!!」と、看護師さんに「たすけてー!!」と違う意味で叫んだりしていたというのに。
しかし、この建物も馴れればまたやるんだろうなぁ。
検査結果は、体温は普通だけど水分が少し足りなくて、うんちが固くなってしまって便秘気味、とのこと。冬場には、こういう猫が増えるそうだ。注射を打っていただいて、ひととおりの質問をして、記憶力が落ちた頭に回答を意地で叩き込んで帰途につく。
また吐かれた…注射ってわりと早く効くと思ったのに、やわらかくしたカリカリも全部吐いてしまった。獣医でびっくりしたのかなー…もしまた吐くなら連れていこう、ということで、少し横になる。猫も一緒に。
今度はふやかしたカリカリではなく、猫缶を少しだけ食べさせてみた。吐かなかったのと、もし明日休診でも、いつも愛犬がお世話になってた獣医さんは開いているから「様子をみてみたら? あんた心配しすぎじゃないの」という父をせっついて、ファックス番号を電話して聞いてもらった。耳が不自由なことを告げると「ファックスでもご相談承りますよ」と言ってもらえたのに、肝心の番号が診察券にも薬の袋にもなかったのだ。確認せずに聞き忘れたわたしが愚かだったとはいえ…ファックス番号は、電話番号の末尾が入れ替わっただけの番号だった(でも、電話番号に送ってもファックスは届かない)

猫はというと、少しわがままになった。父娘ともどもインフルエンザで寝込んでしまったとき、世話はしていたが構ってやれなかったのが、ストレスの原因だった。点滴でしか栄養を取れなかったわたしのイライラを察してか、いつも布団に入ってくるはずの猫は近寄らなくなり、1ヶ月くらいで注射も打たずに生きていけるようになった途端、枕元で寝たり段ボールをかじったりを始めたのだ。
猫って、犬より構わなくても大丈夫だと思い込んでいたが、どうも我が家の愛猫は、スキンシップをたっぷりしてやらなくてはいけないようだ。……やっぱりどうでもよくないが、噛みつかれたりキックされたりした手やら腕が痒くて痛い。
この子が病気になるよりは、そういうことをされたほうがマシだ。しかし、ルーターをジャンプして落としたときは、さすがに怒った。