朝から、祖父が医大で検査を受けるというので、父とともに付き添ってきた。
祖父の体に異変が訪れてから一ヶ月経過するが、はたから見ても検査まみれである。今日の検査は、内視鏡。かつてわたしは、内視鏡を飲むのが怖くてパニック状態になったことがある。「これでは(寝てもらわないと)暴れて臓器に傷がついてしまう危険があるので、できない」……という結果だったが(そのとき、わたしはストレスからくる胃炎と潰瘍を起こしていた)。祖父もあんなカメラを飲まなくてはならないんだろうか、苦しいんじゃないか…と思っていると落ち着かなくて、持って来た小説を閉じたり開いたり、果てには後ろから読み出したり、分娩室に入った奥さんを待つ旦那さんのように頭をかかえたりした。
ところが、10年もすれば医学の進歩なんてめざましいもので、なんと内視鏡は、髪の毛ぐらいの太さしかなかったそうだ。祖父は大腸も内視鏡検査をしているが、それでは確かにほとんど違和感をもたないだろう(嫌悪も恐怖も)
でも、組織採取ってそんな細いのでできたっけ…?

祖父を自宅に送り届けた後は、父と買い物に出かける。今はいているジーンズは色が濃くて、白いベルトがインディゴブルーにところどころ染まってしまって、黒いめのベルトが欲しかったのと、父の携帯が壊れかけで、買い替えるのが目的のお出かけ。
父が選んだ携帯は、先日終了を迎えたばかりのドラマ《僕の歩く道》のテルのロードバイクを思わせる配色だった。「どれが良いと思う?」と訊かれたが、父の携帯なので「自分のだから、自分で選びなさいよ」と、素っ気なく返してしまった。
父は「使えるならばどれでも良い」とのたまって譲らないので、「じゃあ、これはディスプレイが大きいし、デザインもカッコいいから、これが良いと思うよ」と、その機種の黒を指差したら、父は「黒は見えにくい」と言ってきて、テル色の機種になったわけだ。
そして次は、わたしのベルトを買ってもらった。色は黒で、金具がシルバー。それにしても、最近って太いベルトばっかりだなぁ……好きだけどね。



祖父の病名は、まだわかっていない。
来年も、また検査が待ち受けている。
だからわたしは、医大がどうも好きになれない。
かつて死にかけた場所でもあるから。